ばっかじゃないの!

じゃみらー

病院で助けてと叫ぶ老人

訳あって緊急手術をした。
そのときに重症室というところで一晩いた。
自分も痛みで朦朧としていたが、夜中に老人の大きな声で意識がはっきりとした。
その老人は、「帰らせてくれ」と言っているようで、どうも状況を把握していない。
看護師が言うには、夜中、救急に脳卒中で運び込まれたとのことだった。
状況を説明する看護師の言うことを理解しているのか分からないが、一向に大声を出し続けた。


重傷室では心拍や血圧、点滴などの器具がずっと取り付けられ、身動きはとれないし、とらせてもらえない。
寝返りを打つのでさえナースコールを押さないといけなかった。
そんな状況を理解できないと、恐怖は拭えないだろう。
それに触発されてか、別の患者がたびたび起き上がったらしく、心拍の異常を知らせる音が鳴り止まなかった。
この音には少し気が参ってしまい、空耳で聞こえ続けた。
バンバンバンと叩くような、引っ張るような音がそれから聞こえてきたので、たぶん手を縛られて動けないようにしたんだと思う。


結局、老人はドアの付いた小部屋に移され、ほどなく静かになった。
黙ったのか黙らされたのか、あるいはどうなったのかよく分からなかった。
看護師たちは何度もなんども説明して説得してもらおうとしていたので、やむを得ない措置のように思えた。


どれくらい時間が経ったか分からないが、さきの老人の叫び声が壁越しに聞こえてきた。
「たーすーけーてー」だった。
これもしばらく続いた。
やはり耳に残るし、意識も鮮明にならざるをえない。
きっと触発されたのだろうが、またバンバンバンと聞こえてくる。
ふと出てきた言葉が「看護師さんも大変だなぁ」だった。
看護しているにも関わらず、そんなことを言われるのだもの。


思いのほか冷静で、自分のお祖母ちゃんの緊急入院のことを思い出した。
少しろれつが廻らなくなって、自分で立てなくなったため救急車を呼んだのだった。
お祖母ちゃんは、運ばれた病院で、手足を縛られた。
両親は事前に説明を受け、そのことに同意していたらしい。
ベッドから降りようとして転倒など事故を防ぐためだという。
お祖母ちゃんは病院で手足を縛られるなんてあり得ないと思ったんだろうか、相当な見幕で啖呵を切ったらしい。
それで一気に病院不信になって、絶食して衰弱していった。


このような事態はあまり珍しくないようで、実際に病院での手足の拘束は問題になっていると聞く。
推測になるが、さきの老人も手足を縛られていたのではないだろうか。
今すぐにでも帰りたい患者が叫ぶだけとは思えない。
(手足が麻痺して口しか動かせない可能性はある)


まとめよう。
何が問題だったのか。
ぼくが思うに、それは患者の無理解と、看護師の対応力の絶対限界。
老人になるとすぐ骨折したりするし、それが命取りに成りかねない。
看護師にすれば目の届かないところでは静かにしておいてほしい。
だが脳梗塞脳卒中、認知症や自分の体への過信*1から、「勝手な行動」を起こす。
それで已む無く手足の拘束が承認される。
看護師は介護師ではない。
病気や怪我は看れても、介抱まで手が回らないことが多い。


まず老人には、常日頃から、手足の拘束の可能性があることを認知してもらわなければならない。
(正直、これはとても難しいと思うし、本当に認識できたらおとなしくしているだろうし。)
また病院が積極的に介護師*2を雇用することで、パニックの老人と看護師の間に入って問題解決をする。
(これもどこまで実現可能かは分からないが、国や地域による支援は必須かと思う)


考察がイマイチだが、とりいそぎ公開する。

*1:と言わざるを得ない

*2:適切な名前を僕は知らない