ばっかじゃないの!

じゃみらー

コロキウム概要

頭の整理のために書いておく。
合ってるか少し自信がない。
間違ってたら指摘してください。


紹介論文: Phys. Rev. 117, 648 (1960): Quasi-Particles and Gauge Invariance in the Theory of Superconductivity
YOICHIRO NAMBU, Phys. Rev. 117 648 (1960)



オリジナルなBCS理論の有効ハミルトニアンはゲージ不変*1
簡単な平均場としてギャップ関数を導入する場合と、より一般的な平均場として顕わにHartree-Fock(HF)場も一緒に導入する場合とがある。


前者ではHF場は一体のエネルギーの項に吸収されるとして考えない。
こうすると自己エネルギーというものを考えられないというデメリットがあるが、自由な粒子として扱うことができるメリットがある。
ギャップが有限にひらく場合の振る舞いは基本的にこれで分かる。


後者は顕わにHF場も考えるのでself-consistentな近似となる。
Feynman-Dyson方程式を使って自己エネルギーを求めることが可能で、つまり相互作用する粒子として扱うことになる。
単純な平均場で説明できないようなゲージ不変性はこの手法で扱う必要がある。
平均場に対する揺らぎを取り込むことに対応している。



ゲージ変換を考えるということは、とりあえず電磁場があるときの話をしなきゃいけない。
まぁ目標はマイスナー効果で電流がゲージ不変になること。


単純な平均場ではギャップ関数の定義から明らかにゲージ変換に対して不変でないことが指摘されていた*2
少なくともHF場も顕わに含めた平均場でやる必要がある。
それを南部先生はバーテックス補正をゲージ不変になるように取り込むことで解決した。
ゲージ不変性を保つようなバーテックスと自己エネルギーのWard恒等式を一般化している。
「ゲージ不変になるように取り込む」と書くと恣意的な操作のように思われるが、そうでなくて、考えている補正以外の補正は含めてはいけないということを意味している。
というのもFeynman-Dyson方程式は謂わば逐次代入する方式をとっているので、つまり初めに仮定した補正以外のものも考えうるわけ。
で、それは含めちゃいけないよということ。
AndersonはRPAでゲージ不変性を復活させたけれど、それも一般化Ward恒等式を満たす補正の一つということになる。
実際に南部先生が自己エネルギーとして取り込んだのはAndersonがやったRPAと同じなんだけど。
ミグダルの定理からそれを考えるだけで十分ということが実は言える。


ぶっちゃけ一般化Ward恒等式を満たすなら電流もゲージ不変になる。
それはもういいとして、一般化Ward恒等式の長波長極限を考えるとバーテックスがsingularな振る舞いをしなければならないことが分かる。
ということは長波長極限で集団励起モードが存在するんじゃないかという予測ができて、実際にそういうモードが存在する。
もっと直感的に議論できたりする。
というのも、RPAで無限次までやるってことはまぁ等比級数の型が出てきて、それは等比級数の和は分母に収まることが言えて、そこから分母がゼロになるってのが見えてくる。


常伝導状態のとき位相について基底状態は対称だけど、超伝導になると位相が一つに定まっちゃう。
そこにベクトルポテンシャルが入ってくると位相が揺らぐことになる。
バーテックスを考えるってことは位相揺らぎを取り込むってことに対応してるわけ。
徐々に位相をずらして励起しようとする。
つまりそれはゼロエネルギー励起で、今で言うNambu-Goldstoneモードということになる。


ところがいま位相の揺らぎが縦波の電流を誘起したことになる。
それはまぁ電荷密度の揺らぎを生むわけだけど、そこにクーロン斥力が入ってくると、その電荷密度の揺らぎを抑制しようと働く。
つまりクーロン斥力を含めて位相揺らぎを考えるとギャップがひらく。
それはすなわち縦波も質量をもつということ。
(横波はもともと質量を獲得していた。)


これを初めに見つけたのはBogoliubovとのこと。
2体の相互作用がフォノン媒介のようなs-waveだったらマイスナー効果に影響しないとか、d-wave likeな相互作用があると話は別だけど、マイスナー効果への影響は小さいらしい。
強力なd-wave likeな相互作用だともうちょっと状況が変わるらしい。


ちなみにBogoliubovが最初に発見してるのに何でNambu-Goldstoneという名前がついているかって話なんだけど、南部先生がはじめて位相の揺らぎとしてその集団励起を捉えたとかいうのが味噌らしい。
それまでは単なる密度波として考えられていた?らしい。

*1:相互作用の項の4つの場の演算子の位置の引数rが全部同じなら局所ゲージ不変性まである。正確には少しズレてるけどAndersonがそのズレは深刻でないことを示している

*2:南部先生の論文にはそういう風に書いてあるけど、別にU(1)ゲージは破れてるのとマイスナー効果でゲージ不変でないというのは別問題だということが分かっている。